AI記事が侮れない。ライターに未来はあるのか
「ライターに未来はあるのか?」
数年前から少しづつ不安を感じていましたが、Chat GPTの登場でいよいよライターという職業の未来が怪しくなってきました。
「AIに仕事を奪われる」という警告はずいぶん前からありましたが、描く・歌う・演技するなどのいわゆるクリエイティブ職はAI化を免れるだろうといわれていました。クリエイティブの端くれであるライターも、まあ大丈夫だろうと高をくくっていたのです。しかし、甘かった。ボーカロイドが歌の世界を席巻し、AI画像やイラストがオンライン上に溢れる今、ライティングもAI化の波がやってきています。知らぬ間にAIの波にさらわれ、海面でアップアップしているのが今のライターの状態かもしれません。
思えば、クラウド上のマッチングビジネスが登場した頃から、プロライターたちの悲劇は始まりつつありました。フリーランスのライターやデザイナーがクラウド上で商談をして、仕事契約を結ぶシステムは画期的でした。「もう営業しなくてもいい!原稿だけ書いておけばいい!」と、飛びついた人も多いでしょう。しかし、クラウドビジネスの登場から、ガラガラとライティング料金の値崩れが始まることになりました。
クラウドが出現する前は、マスコミ業界や広告業界に身を置いていなければ、ライターとして活動することはできませんでした。当時は紙媒体やTV・ラジオなどのマスメディアの仕事が大半で、クリエイティブ職と技術職の中間にあるような案件が多かったように思います。デジタル分野の発達で、WEB上でメディアが簡単に作れるようになってからは、自分メディア、自社メディアが続々登場しました。ライティングのニーズも拡大しましたが、すべての仕事がプロライターの持つスキルを必要としているわけではありませんでした。
日本で教育を受けた人であれば、文章の上手下手はあるものの、なんとか書こうと思えば日本語で原稿が書けてしまうものです。それほどハードルの高くないライティング案件が多量に発生し、副業ライターが続々と誕生しました。長年プロとしてライターをしていた人と比べれば、文章の質は月とスッポンですが、ライティング価格も月とスッポンな訳です。とにかく記事を大量に集めてグーグル上位を狙おうとするサイトは、質はさておき安く記事を書ける人を必要としていました。小手先のSEO対策がグーグルに通用しなくなってからも、格安ライターのニーズまだまだあるようです。
ガクンと落ちてしまったライターのプロフェッショナリズム。それでも、記事の信ぴょう性や品質を重視するメディアや大手企業はプロのライターを求めていました。格安案件が多数はびこる状態を苦々しく思いながらも、プロライターは細々と執筆活動を続けてきました。デザインや写真を学び、「記事もかけてデザインもできる。一眼レフで簡単な撮影もOK!」というような付加価値をつけたり、専門分野の資格を取って専門ライターとして売り込んだり、職人的努力を積み重ねてきたわけです。
弱っていたライター業界に、ラスボス的に登場したのがChat GPT。はじめは高をくくっていました。AIの原稿なんて読めたものではないと。
しかし、今、完全に雲行きが怪しくなってきています。いや、本当に危ないです。ここ数年以内に半分以上のライティングがAI原稿になるのではないかと思うほどです。正誤性や媒体に合わせた文章のテイストなど、細かいところはまだまだですが、クラウドでお小遣い稼ぎをしている駆け出しライターぐらいの質はやすやすとクリアしているように思います。近い将来、クラウド上で散見される超低価格のライター案件は姿を消すかもしれません。ライターを始めたばかりの人は、少し焦った方がよいでしょう。
「いや、でもやっぱり大手企業はプロの質が必要よね」という希望的観測にも暗雲が立ち込めています。私は翻訳の仕事もしていますが、大手であろうがなかろうが、翻訳は機械翻訳(MT)が大半の仕事を持っていきました。しかし、MTだけでは文章がこなれておらず、訳抜けや間違いもあることから、不備を正してクオリティの高い文に仕立て上げるポストエディットの需要が増しました。ライティングの仕事も同じく、最初の原稿はAIに任せ、人間がリライトや編集をして、記事の質を担保するという時代に突入することでしょう。
では、プロライターはどうすればよいのか?
AIを敵視するのはやめて、AIをうまく使いこなす能力を磨く必要があるかもしれません。またはすぐにはAIが取って代われないような分野をメインにすることも考えられるでしょう。情報系、知識系コラム記事はAIの得意分野ですが、人物取材や企業取材など一次ソースから話を聞きだす案件はまだ安全圏かもしれません。いつかAIがインタビューをうまくできるようになると、そこの分野も厳しくなるかもですが…。AIを同僚にする世界はすぐ足元に。あれ?もう腰ぐらいまでつかっているかも? 脳みそをグイグイひねって、ラスボスと仲良くなる方法を考えましょう。